歯並びや発音の悪さの原因について

歯並びや発音の悪さの原因について

1991年から4年間に渡り、歯科の専門誌に『美の追究』というタイトルで、当院顧問の稲葉繁が、審美歯科について連載させていただいておりました。
当院の審美歯科治療は、すべて、このコラム『美の追究』を原点としております。
私たちが考える、審美歯科は、歯を白くするだけの技術ではなく、もっと根本的な審美の法則に基づいております。
このブログを読んでいただいている読者の方にお伝えすることが出来ればと思います。

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発音の悪さが目立つ時代

近頃テレビを見たり、ラジオを聞いていると、発音の悪い人が目立って多くなってきた気がします。

それも戦前、戦後の食糧事情があまり良くない時代に育った中高年の人には見られず、景気回復の兆しが現れてきた昭和30年代以後から飽食の時代といわれる現代に生まれた人たちの中に多く見受けられます。

特に、しゃべることを業としているアナウサーやキャスターでも発音の悪さが目立っているのはなぜでしょうか。

アナウサーではありませんが、衛星放送の際、外国放送を同時通訳する人の中にも発音にクセのある人が何人かいて、大変聞き取りにくいことがあります。あるテレビのアナウサーの中には「サシスセソ」と「タチツテト」の発音が区別できず、甘ったるいような、聞き取りにくい発音をしている人がいます。

このような人を気にしてみていると、例外なく歯並びが悪かったり、オープンバイト(前歯が開いている噛み合わせ)である人が多く、特に前歯が叢生(歯並びが悪い)で、犬歯が八重歯になっていて大変気になります。

そんな状況を私たち歯科医師が見ていると、むなしい気がしてなりません。

このような歯並びの状態の人たちは、ただ単に見た目が悪いと言うだけでなく、将来審美性の問題や顎関節症の治療の必要性を抱えた潜在治療困難患者であり、将来必ず歯科治療を希望して来院することが予想されるからです。

哺乳瓶の歴史は100年

人類の進化過程では、自然環境の中で生活し、食糧も動物を捕獲したり、植物を採集し、自然の食物を摂取してきました。

人工的に食物が栽培されたり、家畜が飼われて、それを食糧として生活したのは農耕文化が入ってきた縄文時代以後のことでしょう。

前期弥生の農耕民の遺跡から、親子の牛の遺体が発見されています。土師器文化期になると家畜の飼育が盛んになっていることから、1400年前には牛乳の飲用が行われていたと考えるのが妥当だと考えられます。

そこでは、子どもを育てる場合には母乳による保育が行われていたことは当然ですが、家畜から乳を母親代わりに与えたことも考えられ、与え方も、器から直接飲ませたり、匙のようなもので与えたのではないかと想像されます。

粉ミルクを哺乳瓶で飲ませるのが一般に広まっていたのは戦後になってからのことですが、牛の乳を哺乳瓶を用いて飲ませるようになった歴史は比較的新しく、1897年(明治30年)前後にオランダ製口吹ガラスのものが、ごく一部の人に使われたのが最初と言われます。

それまで竹の筒におかゆ等を入れ、飲んでいました。

進化過程を再現する胎児

宇宙の惑星である地球上に生命が誕生したのは、今から40億年前にさかのぼります。太陽からの紫外線を避けて、海中に原生動物が誕生し、その後デボン紀に硬骨魚類が生まれ、進化をした魚は両性類として陸に上がってきました。その後、爬虫類が生まれ、哺乳類が出現しました。

ドイツのヘッケルは「個体発生は系統発生の繰り返しである」という設を唱えました。それは、卵から発生が進んで成体に達するまでの過程は、その生物が辿ってきた進化の過程を短時間で再現している、というものです。

母親の胎内で一個の卵子と精子が結ばれ、受精卵ができ、生命への第一歩を迎えます。その後、母親の羊水の中で39週間を過ごし、その間12~15週間には、羊水を飲み始めると同時に、生まれてから母親の乳頭に吸い付くための準備運動である指しゃぶりを始めます。

このことは最近の超音波診断器の発達により証明されています。うまれてからは、しばらくたつと手と足を使い上手に腹這いを始め、高這いを経て、体を浮かせ立ち上がります。

これは、あたかも生物の進化過程と同じ経路を辿っています。すなわち、海水中の魚から両生類として陸へ這い上がり、爬虫類を経過して哺乳類となり、直立二足歩行が完成するのと同じということです。

お乳は、吸ってもらって初めて出る

人間の胎児は、哺乳動物としては未熟のまま生まれてきます。つまり、大脳皮質が良く発達しているため、頭が大きく自力で立ちあがることができません。そのためじぶんから母親のお乳を吸いに行くことができず、母親からの授乳により生命が保たれます。

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哺乳という行為は自然の摂理であり、赤ちゃんが乳頭を吸うことにより、下垂体から分泌される催乳ホルモン・プロラクチンによって乳汁が促され、積極的に授乳することで、十分な母乳が出てきます。

小児科医は

「お乳は出るから赤ちゃんに吸わせるのではなく、赤ちゃんい吸ってもらって初めて出るのです」と訴えています。

人間の進化過程で、現在のように人工的に哺乳瓶を用いて母親の代わりに授乳させてきた時代はなく、それは乳児の成長に大きな影響を与えています。

どんな乳頭の形態といえども、人間の乳首に勝るものはありません。

乳児期に良い歯列(歯並び)を作り出す大きながっしりとした顎を母乳により作り上げる必要があります。

母親の胸に抱かれての授乳は、生まれたばかりの赤ちゃんにとって最大の運動であり、額に汗を流しながら夢中になって母親の乳頭に吸い付き、疲れ切ってすやすやと眠りに入ります。

しばらくすると思い出したかのように再び吸い始めます。

この行為は顎口腔系の発達に非常に重要であり、誤った哺乳行動が舌壁を生む要因となります。

その結果、ディスクレパンシー(歯並びが悪くなる)を引き起こし、発音の悪さに大きく関わりあいがでてくるということです。

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国産のニップルは乳頭が長くて穴が大きく、空気孔もあり、努力しなくても乳が出ます。


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NUKの乳頭を舌で口蓋に押し付けることで父が口蓋いっぱいに広がり、歯列を作ります。

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こちらは、NUKのおしゃぶりを吸っている赤ちゃんです。