美の世界に見るイリュージョニズム(その2)

美の世界に見るイリュージョニズム(その2)

1991年から4年間に渡り、歯科の専門誌に『美の追究』というタイトルで、当院顧問の稲葉繁が、審美歯科について連載させていただいておりました。

当院の審美歯科治療は、すべて、このコラム『美の追究』を原点としております。

私たちが考える、審美歯科は、歯を白くするだけの技術ではなく、もっと根本的な審美の法則に基づいております。

このブログを読んでいただいている読者の方にお伝えすることが出来ればと思います。

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合わせ鏡

私たちが壺などのシンメトリーなものを観察した場合、そのまま両眼で立体的に見た時には、その対称性の判定はとても難しいのですが、鏡に映して見たり、写真に撮って見ると簡単にわかります。

あるいは、片眼を閉じて立体感を出さずに観察することも1つの方法です。

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鏡は見る対象の面を映し出すことしかできず、もし自分の後ろ姿を見たい場合には2枚の鏡を使って合わせ鏡にするしかありません。

また、そうすることによって、他人の目に映る状態を自分で確認することができます。

鏡が2枚相対すると、お互いの鏡の中に反対側の鏡の様子が映し出され、その中に再び反対の面が映し出されます。

それが、無限に続き、ついには小さくなり消えてしまうという現象は、経験されたことがある方もいらっしゃるでしょう。


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18世紀、マリー・アントワネットの住居であるパリのヴェルサイユ宮殿には、壁全体が鏡で作られている部屋があります。

それは第一次世界大戦終結の講和条約締結のためヴェルサイユ条約が結ばれた部屋として有名な『鏡の間』 と呼ばれているところです。

また寝室にも鏡がはられ、その中に立つと鏡の中に反対側の鏡が無限に映しだされていき、中心に向かって小さくなって像が消えます。

鏡と鏡の相対する中に生まれるイリュージョンです。

仕上がりは一度鏡に映して、患者様が見る状態で確認する

人は鏡の中に自分の姿を見るとき、二次元の世界、すなわち平面の中でしか見ることができません。

しかも、その映し出された姿が左右逆になっていることに何の疑いも持たず、自分の顔を他人が見たとき、いつも見ている鏡の中に映し出された自分の顔とはまったく反対に見え、このことは日常生活でごくありふれているため、さほど気にもとめていないのが普通です。

そして他人が描いた自分の顔の絵や写真を見て、あらためて確認するのが普通です。

このことは、私たちが患者様の口元や顔とのバランスの判定を行う時に考慮にいれなければならないことです。

患者様には鏡を使って二次元的に見ていただくこと、写真に撮って他人が自分を見た時の状況を評価してもらう必要があります。

歯科治療の仕上がりは、一度鏡に映したり、写真に撮り患者様自身が見た場合どのように見えるのか、確認をすることが必要です。

また、技工士の側も製品の仕上がりの評価をするとき、一度鏡に映したり、写真に撮り二次元的に観察することが重要です。